ワールド・チベット・ニュース   2006年11月・12月 第7号
カナダのワールド・チベットニュース(WTN)のご厚意によりご了承をいただき、その一部を転載しています
【ダライ・ラマ法王とノーベル平和賞受賞者広島平和会議での共同声明】     
       11月2日/WTN共同
ダライ・ラマ法王と二人のノーベル平和賞受賞者は木曜日(2日間開催)広島で開かれた平和サミットで、他人の苦しみに無関心でなく、世界の出来事にもっと目を向けるよう求めた。「我々は、 子供や老人、虚弱な人々の痛みを、もっと地球的な規模で関心を寄せるよう変革していかなければなりません。様々な問題は自分たちで起こしており、それは自分で解決できるものです」と、サミットで世界に向けメッセージを発信した。 広島国際平和会議には、法王他、二人のノーベル賞受賞者が参加した。南アフリカの反アパルトヘイト活動家デズモンド・ツツ元大主教と北アイルランド平和活動家ベティ・ウィリアムズである。法王は声明で、広島が第二次世界大戦においてアメリカに原爆を投下され荒廃したことで『世界で最も破壊的な武器の痛みを知る場所』とし、また『自分の国や町、周りを優先させるのではなく、地球ファミリーとしての考えの下、全世界を優先させるという大きな視野に立つ事が大切』と述べた。 ツツ元大主教は日本が1945年に原爆を体験していることから、苦しい状況下にある他国を助けることを願うと。一方、ウイリアム氏は子供たちに多くの宗教があることを学べるよう教育システムの変化を求めた。サミット終了後、3人は平和記念公園で被爆者の記念碑を訪れ、献花した。

【ナンパ峠生存者の会見を開く】 
       11月7日/Phayul
Freind of Tibetがデリーの記者クラブで、ナンパ峠銃撃事件の生存者から話を聞くため、集会を開いた。集会にはインドの若者ばかりでなく、チベットの学生も多く集まった。 二人の生存者は、ツプテン・ツェリン師と、その襲撃を目の当たりにし西洋の登山隊のトイレに隠れて襲撃を免れたロブサン・チョードンである。 集会はその峠の近くでキャンプをしていたルーマニア登山隊が撮影した10分間のビデオ上映で始まった。二人の解説が流れると、会見場は水を打ったように静まりかえる。まず、ロブサン・チョードンがその全容を話した。彼は打ちひしがれたような表情で、チベットからの危険な逃亡をとつとつと語り始めた。 彼はKardze地方出身で、よりよい生活を求め、 両親、妻と二人の子供を郷里に残して亡命することにした。最初に彼らが取ったルートをスケッチで示すと、その顔には恐怖がまざまざと甦ってきた。「急に発砲され、どこへ逃げようかなど考えることさえ出来なかった。私はありがたいことに外国人キャンプのテントに隠れることが出来ました」中国の警備兵にその場で撃ち殺された17歳の尼ケルサン・ナムツォの悲惨な死についても語った。「中国の攻撃から逃れてテントに隠れていた時には、どんな気持ちでしたか」との質問に対して、「まともな服も身につけてないまま、寒さと死を目前に隠れていました。何時間も経ってからやっとそこにいた白人に事の次第を話すことが出来ましたが、言葉ではとても苦労しました。中国警備隊に捕まった31名の同胞を尻目に、私は間一髪で逃げ切ってきたのです。彼らがどうなったかは、誰にも分かりません」とロブサンは答えた。 彼はチベットから来たばかりの若いチベット人を教育する特別なトランジット・スクール(在ダラムサラ)へ参加する予定だ。(中略) 23歳のツプテン・ツェリン師は、チベット本土で僧でいることは、より死に近いことを指す、と語った。チベット僧や尼僧にダライ・ラマ法王を誹謗/中傷させる事は、今や中国政府の常套手段となっている。法王を非難する文章を無理やり読ませたり、学ばせたりするのである。ツプテン師はネパールに入って来て、人生で初めて最良の時を味わうことが出来た。カトマンズにあるナミゲル高等学校に行った時のことである。空高く国旗(チベット)がたなびき、子供達が国歌を歌っていた。チベット本国の学生が、自分の国旗を掲揚し大声で国歌を歌うという、そんな小さな自由を手にすることを私はどんなに望んでいることか・・・と述べた。彼はこれから南インドのセラ寺で仏教教義を深めていく。

【チベット人への仕事配分の不平等で、学生が町を練り歩く】
        12月6日/Tibet.net
ダラムサラ発:(チベットでは)中国人の卒業生に比べるとチベット人の学生にとってその教育システムは大変不利で、特に求人市場においての仕事配分では、チベットの学生に対し公認の差別があり、彼らは仕事を得るために路上でデモをするなど戦かっていかねばならない。 2006年6月、州都の西寧にあるチンハイ国立学院のチベット人学生約百名が『チベット人の卒業生にもっと良い仕事の機会を』と要求しデモを行った。報告では、この抗議デモの首謀者は刑務所へ収監されたが、他の人々は拘束されていないもようだ。 学生は三つの要求を出した。政府は少数民族の中で幹部と学者を育て、その生活の保障をするという約束の順守。しかし、現在少数民族出身の卒業生の生活には、それが反映されている様子は微塵も無い。もっともこれは中国の常套手段である。 二番目の要求は、中国の西部開発に中国人の大卒ばかりを起用する政策の中止である。この計画の下、中国の中央政府は毎年20万の学生を開発が遅れている西部地方の援助に行かせている。これが現実には少数民族の学生の仕事を、中国人学生が奪っていることになる。中央大陸から来た学生は西部地方に3年間いて故郷に帰ることになっている。しかし、実際には、多くの人々が彼らに与えられる特別な権利と報奨金を目当てに残り、さらに少数民族から仕事を取り上げることになる。  チベット人学生の最後の要求は、大学入学試験における権利の乱用の撤廃である。中国本土の大学、または地元の学校でより高い教育を望む少数民族の学生に対し、中国人より低い合格ラインが設定されている。しかしその低い合格ラインを利用するため少数民族地域に住む中国人が自身を少数民族として登録したり、その権利を買ったりするのである。チベット人学生はこの現状打破を望んでいる。

【ダラムサラはノーベル平和賞受賞記念日をファンファーレで祝う】
       12月10日/TibetNet
凍てついた十二月の日にもかかわらず、ダラムサラの北部でチベット人がダライ・ラマ法王のノーベル平和賞受賞記念の祝いを大々的に行った。公式行事は法王の勅願寺でファンファーレと共に開催され、チベットの友人としてロシアとカルメキア共和国(ロシア)からゲストが行事に参加した。 主賓はヒマチャル州の元大臣ビジャイ・マンコティア氏。祝辞では法王の恩恵でいつの日か祖国に帰る希望を持ち続け、またその日が来ることを信じている、と述べた。  カルメキアの大統領Kirsan Illumjhinovはカルメキア国民だけでなく、世界中の人々が平和の唱道者としてダライ・ラマ法王に絶大なる尊敬を寄せていると述べた。法王は今日のリーダーや政治家の代表でもあるとも。また、大統領は自国では最高の勲章である「白蓮」を法王に差し上げ、 「カルメキア人が法王を受賞者に選んだのは、カルメキア人の精神的な拠りどころとなり、共和国の再生に寄与したからです」と述べた。大統領によるとカルメキアの人々は過去の精神的な繋がりを重視し、チベット問題の助けになるよう手を差し延べていきたいとも語った。カルメキアは共産党支配の後、多くの仏教寺院を建設したが、現在ではヨーロッパ最大の仏教寺院がある。 法王は「チベットは世界の屋根であり、平和地帯です。何故ならチベットは平和な国で、その伝統は釈迦の教えと非暴力に基づいています。チベット問題は政治的なものだけではありません。仏の教えを継承することにも関連しています。したがって、彼らがチベットの道徳的な価値を継承できれば、世界中を救うことになるでしょう」と。

【来年青海―チベット鉄道に豪華列車が初登場】
       12月18日/新華社通信
青海省の高官によると、今年7月に運行をスタートさせた青海−チベット鉄道に、来年豪華列車がお目見えする予定。運行させている青海−チベット鉄道社は中国の観光局と協力関係にあり、中国北西部の青海省の省都西寧に拠点を置いている。 関係者によると、特等列車は最新の設備が施されており、その利便性と快適さは星で評価される世界の一流ホテルに匹敵すると述べた。  青海には今まで国際的な玄関口がなかったが、2007年度にはつくることをほのめかした。すると海外からの観光客は直接青海に到着でき、美しく斯くもミステリアスな青海チベット高原を特等列車で旅することが出来るのだ。 チベットへはここ10ヶ月で225万人以上の観光客が訪れており、地方観光局によると一昨年比31.8%も上がっている。観光客の巨大な流入は、上述の期間に地域に24億元(およそ3億米ドル)以上の観光収益金をもたらした。  観光省の役人は、観光客が急増する「世界の屋根」に建設した青海-チベット鉄道を、より快適にしたと述べた。

            ( 訳 : ケーサン・ドルカー / チベット文化研究所 )