ワールド・チベット・ニュース  2006年5月・6月・7月 第5号
カナダのワールド・チベットニュース(WTN)のご厚意によりご了承をいただき、その一部を転載しています
【中国はダライ・ラマを招聘する国を牽制】     
       5月11日 インダスタン・タイムズ
 中国は木曜日、チベットの精神的指導者であるダライ・ラマ法王の南アメリカ訪問に反対、また外国の政府に対し法王の政治活動や宗教を口実にチベットの独立を示唆することに対し警戒を求めた。  「われわれはダライ・ラマが国際的な舞台で、宗教の名目により分離運動をすることに反対しているだけです。それぞれの国が警戒してくれることを望みます」と中国外務省のスポークスマンである劉建超が北京で記者を前に述べた。また、「ダライ・ラマは純粋な宗教者ではありません。彼は政治亡命者であり、祖国分離活動に携わっています」と、南アメリカのアルゼンチンやペルーなどの訪問に先立ち批判した。

【ティパ大臣、今期も政策に変更なし】 
       5月19日 TibetNet ダラムサラ
 中国とチベットの話し合いは常に重大な懸案事項であるが、もし2期目に選ばれても政策や現行政府機関としての対応に変更はない、とティパ大臣(サムドム・リンポチェ教授)は今朝述べた。
 チベット選挙委員会が開いた公開フォーラムで、次期の優先事項について、「それは1期目と同じです。最も重要なことはチベット問題を友好的な解決に導くことです」「二つ目は、インド並びにネパール、ブータンに定住したチベット人の福祉に気を配ること、そして若者の教育です」また、第14回チベット代表者会議を多くの若者が占めていることには、「若い世代は現在正当な責任を負っています。この会議で様々な変化をもたらすことを期待しています」と語った。

【ダライ・ラマ法王、独立は必ずしもチベットの利にならず】
       5月31日 タイムズ(インド)
  ダライ・ラマ法王は水曜日、チベットの独立はヒマラヤ地域においては得策にならない、今のままであれば中国の経済成長から利益を得ることができると述べた。しかし、法王は自治区に住む600万人の類のない文化や仏教の伝統を保存することを度々要求している。また、チベット問題において、チベット人が満足する方法で解決されれば、海外での中国のイメージも上がるだろうと付け加えた。
 「我々は分離を望んではいません。チベットは陸地に囲まれた国で、物質的に大変貧しく、我々は近代化したいのです。理由として、もし中国と共にあれば、自分たちだけでやるよりもっと益が多いからです」とブリュッセルの欧州議会外交問題委員会で語った。また、そこでは宗教指導者やEU,ベルギーの官僚などとも会談した。 「中国は経済が発展をしていますし、その効果は国の隅々まで行き渡っています。今度はチベットがその恩恵を受けるのです。我々は、意味がある自治を実現しようとしています」 ダライ・ラマ法王は、1959年中国に対する決起で母国から亡命し、現在は北インドに.ベースを置く亡命政府の最高指導者である。 月曜日、中国は反抗的であるヒマラヤ領域に対し、そこでの厳しい政策に対しては変更せず、チベットの新しい最高幹部を急遽指名したことを発表。(後略)

【チベット尼僧の壮大な旅】
       6月3日 BBC News シムラ
 二人のチベット尼僧が、精神的な指導者に会う目的で、困難を乗り越えチベットから逃げた。数日後やっと到着、修道女のうちの1人は、病気を訴えているとのこと。
 ダラムサラの情報筋は、名の知れた元政治犯がネパールへ到着したことをBBCに確認した。しかし、ちょうどダライ・ラマ法王は海外に行かれ、6月12日まではダラムサラに戻らない。「リンジン・チョーキーとルドゥップ・サンモは中国政府の規制により故郷では生活が非常に難しい状況下に陥り、極寒のヒマラヤを越えネパール入りするというとても危険な旅を選んだのです」とNGO団体であるインドのCampaign for Tibet(ICT)が語った。
 二人の尼僧はチベットで悪名高いダプチ刑務所で他の修道女と共に過ごした。リンジン・チョーキーは懲役12年、ルンドゥップ・サンモは 9年もの間服役した後、最近刑務所から釈放されたとの報告がある。1993年刑務所にいる間に、彼らが秘かにダライ・ラマ法王とチベットの将来についての歌を作詞し録音したテープはこっそり持ち出され、ついには西洋諸国にまで到達したのだった。この後、彼らは歌う尼僧としてチベット社会において広く知られるようになった。

【中国政府は主なグーグルサイトを閉鎖】
       6月7日 BBCNews
 中国政府は検索エンジンであるグーグルの主なサイトから国内利用者を締め出してしまった、と監視人が述べた。中国の主要都市に住むインターネット利用者は、先週来グーグルの国際検索サイト接続に困難をきたした。しかし、1月に開始されたグーグルの中国語版は、当初は論争の的となったが、今回は影響を受けなかったようだ。
 閉鎖されたサイトは、政府検閲規則に従うため、政治的に考慮されたもの。「検閲を受けたサイト(中国語版)が1月に開始された後、グーグル(英語版)が徐々に隅へ押しやられることは、予想されていました・・・」と国境無き記者団が語った。また、「グーグルは、中国でオンライン検閲に応じている西洋の会社の集まり(クラブ)にちょうど加わったところです」とも述べた。
 以前中国のウェブユーザーは、検閲を受けていないグーグル検索エンジンの国際的なサイト(英語版)を利用できたが、最近このサイトにアクセスすることで問題が生じていると国中から報告があり、5月31日に全国的に閉鎖されたことが分かった。閉鎖はグーグルのニュースやメールの分野にも及んでいる。(後略)

【チベット、インドとの交易再開へ】
       6月20日 チャイナ・ディリー誌
 中国はこの7月6日に、インドと44年ぶりにヒマラヤにある国境Nathulaパスで交易を再開させることに同意した。この協定により2カ国間の交易が、発展するよう期待されている。昨日、当局は、日曜日にラサ(チベット自治区の首都)で2カ国による最終的な合意に達したと発表した。
 1900年代初めには、このパスで中国とインド間の80パーセントの交易が行われていた。しかし、国境紛争により、1962年に閉鎖される。「国境交易の再開は、この地域における経済的な孤立に終止符を打ち、市場経済を発展させる重要な役割を果すことになります」と、Hao Pengが述べた。「また、それは輸送、建設とサービス産業を発展させるでしょう。そして、中国と南アジアをつなぐ主な通商路への道を開きます」
 Nathulaパスはチベットのシガツェとシッキムの間にあり、海抜4545メートルである。中国とインドの交易は現在海路で行われているが、再開によりチベットは、国境交易で大いに利益を得るだろう。

【中国はチベットにあと3つ鉄道計画を予定】
       6月29日 tibeinfor.com
  中国政府は新しく完了した青海-チベット鉄道の拡張として、チベットにあと3路線の鉄道建設を予定していることを木曜日公式に人民日報の海外版で伝えた。
 新しい路線はチベットの首都ラサと東チベットのニンチ、およびラサと西チベットのシガツェを結ぶ2つの路線。3番目の路線はシガツェから中印国境である交易の町ヤドンを結ぶ。この報告は出所を明かしてはいないが、しかし、中国ニュースサービスが以前チベット自治区についての報告書に引用している。
 報告書によると、この新しい路線は10年内に建設され、チベット内での鉄道は合わせて2000キロを超えることになる。7月1日に開通するチンハイーチベット鉄道はチンハイ県の近くのゴルモからラサまで1100キロを超える。チベットの最初の鉄道が、チベットの開発と他の中国地方と交流を促進させ発展するものと信じられている。

【チベットの列車、運行2週間は満員】
       7月18日 新華社
 青海―チベット鉄道は青海省の首都、西寧からラサまで運行されてから2週間で7241人の乗客を運んだこと鉄道当局者が明らかにした。西寧からチベット自治区の首都へ行く列車は7月1日以来すべて満杯だった、と西寧鉄道駅の副部長ギュ・ヤンメイが語った。
 青海―チベット鉄道は西寧―ラサ間1956キロで海抜4000メートルを走る。一番高いところでは5072メートルもある。旅客列車は3台で、北京、成都(または重慶)と西寧(または蘭州)から、毎日チベットへ運行されている。鉄道が開かれる前は、北京、成都、他の中国の都市から飛行機が毎日何百人もの人をラサへ運んでいた。しかし、列車の方が費用面や途中の風景を楽しめるなどの利点があり人気があるようだ。

【欧州議会代表団、ネパール政府にチベット福祉事務所を再開させるよう迫る】
       7月25日 TibetNet ダラムサラ
 欧州議会代表団が6日間の予定でネパールを訪れ、チベット福祉事務所の再開の必要性を要請した。加えて違法であるチベット難民が、そのことを申し立てるのは不可能であるとも。
 チベットメディアによると、欧州議会のチベットグループの代表トーマス・マンは「チベット人にはチベット福祉事務所を持つ権利があり、それをNGOまたは他の名前にすることを好みません」とphayul.comを通じて述べた。「今回我々はネパール当局や、政府、更には一部の議員やNGOのリーダーに会う機会がありました。ここ数日の間、誰に会ってもこの福祉事務所を再開させる必要性を勧め、彼らを納得させるよう最善を尽くしましたが、もちろん、はっきりした答えはありませんでした。最も重要なことは、我々が常にチベット難民問題を提起することだと思います。違法なままで、ここにいる人々の存在を明言することは不可能です。彼らには、自分たちのアイデンティティと難民カードを持つ権利があります。また、ここに留まる権利もあり、後でインドや他の場所に行けばいいのです。我々は再び欧州会議が開かれる時、欧州委員会と欧州議会の友人たちへ、チベット福祉センターの重要性を伝えます。多くの人々が、ここに来る機会があればいいですね。米国への移住は解決策の1つではありますが、もっと多くの解決策がなければなりません」と述べた。

            ( 訳 : ケーサン・ドルカー / チベット文化研究所 )