ワールド・チベット・ニュース    2005年10月・11月 第2号

カナダのワールド・チベットニュース(WTN)のご厚意によりご了承をいただき、その一部を転載しています
【中国当局は、チベット地域で反分離主義者キャンペーンを進めている】
          10月5日 FRA カトマンズ
 RFA(ラジオ・フリー・アジア)は、信頼できる筋によると、中国当局がラサにある尼僧院から40名の尼僧を分離主義者として取締る名目で排除したことを明らかにした。
 ガヤック尼僧院には約50名の尼僧がいたが、中国当局は愛国的な再教育プログラムに強制参加させ、そのプログラムでは顔写真を取り登録せねばならない。6人の幹部尼僧は応じたが、その他は拒否した、と最近ネパールへ逃れてきた僧により語られた。ラサにある宗教省はその件に関しコメントできないとしている。
 また別の筋によると今回の中国政府の目的は、潜在的なチベット分離主義者をあぶりだすものである。最も重要な事は僧と尼僧にダライ・ラマを非難する声明に署名させる事にある。ラサにある尼僧院で尼僧たちが、この声明の署名に拒否すると、一人ずつ呼び出され、署名するか僧院から追放されるかを迫られた。

【ブッシュ大統領、中国にチベット問題で実質的話し合いを要請】
          10月12日 ICT ワシントン
 ICT(International Campaign for Tibet)によると、ワシントンにある中国問題幹部委員会(CECC:Congressional-Executive Commission on China)は、中国政府がダライ・ラマと会い、現在特使 が行っている実質的な話し合いを進めることを、ブッシュ大統領と国会が中国に要請するよう求めた。
 2005年の年次報告書10月11日付けでCECCが「チベット人と彼らの宗教、言語、および文化の将来は、公平で公正な将来の方針にかかっており、それは対話を通してのみ達成され、この対話にダライ・ラマは必要不可欠である。2003、2004、2005年に訪中団が交渉を行ったが、大統領と国会が中国政府にさらに対話を進めるよう要請すべきである」中国が人権法をきちんと尊守するよう奨励し、また、人権侵害の犠牲者のリスト作成など、国際的な人権スタンダードを守っているかを監視するため、米議会はCECCを2000年に創設したのである。

【中国公認でパンチェン・ラマが珍しくチベットへ旅行】
          10月30日 北京 ロイター
 中国が認めた第11世パンチェン・ラマが、選ばれて以来10年ぶりに珍しく旅をして、昨日チベット本土のシガツェにある自分の伝統的な座(タシルンポ寺管長の座)に600人以上の僧の一団に迎えられ戻った、と地元テレビが伝えた。北京政府は1995年チベット第2番目の要人としてギャルツェン・ノルブを選んだが、チベットの精神的指導者であるダライ・ラマは別の少年を選び、中国政府とダライ・ラマの関係はますます悪化している。
生まれ変わりと認められて以来5回目の旅行ということになっている。
 ダライ・ラマ法王が選んだ転生者は決して人前に出ることはなく、1950年中国が侵略した山深いチベット仏教圏のどこかに囚われているとされる。

【チベット人、ラサ鉄道に世界的な抗議を開始】
          11月5日 セシュナ記者 カトマンズWTN
 世界に散らばっているチベット人たちが、中国政府が最近建設したラサへの列車サービス開始を、建築上の驚異と受け止め阻止しようと木曜日ネットで抗議を開始した。
 中国は先月世界で最も高い鉄道として、ゴルムド―ラサ間の完成を発表した。それは、中国本土とチベット自治区の首都ラサをつないだ事になり、列車は来年から運行される予定だ。海外に住むチベット難民は、この鉄道計画はチベットへの大規模な移動につながると主張し、阻止しようとしている。「来年には何十万という中国人移住者がチベット入りする」と主催者は述べた。また、「200万人以上と言われるこの再定住化計画は政治的策略であり、イスラエル―パレスティナやタミール―スリランカ問題のようになるのを避けるためだ」とSFT(チベット自由学生連盟)とフレンズ・オブ・チベットは共同記者会見で述べた。
 チベット人は「電車を止めてください! 」という抗議の手始めとして、今年、中国鉄道に列車を供給することに同意、契約を結んだカナダの多国籍企業Bombardier Incに、今週木曜日請願に行くことにした。(後略)

【ブッシュ大統領、中国の反対を無視しダライ・ラマと会見】
          11月9日 ロイター ワシントン
 11月9日ブッシュ大統領は、北京へ公式訪問をする10日前にホワイトハウスでチベットの精神的指導者ダライ・ラマに会う。「我々は宗教の自由を援護し、また、これからもこれらの問題については発言していきます」とホワイトハウスのスッコット・マクレ-ン氏が述べた。
 これに対しワシントン中国大使館のスポークスマンは、「ダライ・ラマは宗教的シンボルだけでなく、中国を分断しようとしている政治的難民である。彼に対するいかなる国の招聘にも反対する」大統領は法王との面会はこれで3回目になり、翌週には中国の胡錦濤国家主席に会うことになっている。火曜日ダライ・ラマはマスコミに対し、中国支配のもと抑圧的な雰囲気の中で、チベットと中国の話し合いは進んでいないと語った。

【ブータン国会議員が中国との国境問題に懸念を表明】
          11月24日 ICT
 ブータンの国会議員らが、国会でチベットとの国境が国家安全に対する脅威だと述べた。ブータンからの報告によると、2005年11月19日から首都ティンプ−で開かれている国会で、24日に中国との国境問題が議題に上った。「全国から集まった議員らは、ブータン−中国国境問題に対して非常に憂慮しており、国家安全に対する脅威である」とブータン国営テレビが報じた。議員は、国境に沿った氷河の溶解により、中国人がブータンに容易に入国できるという問題を提議した。パロやハー、ゼンギャンから参加している議員によると、北部国境に中国が建設している道路が心配の種とのこと。さらに議員は6キロメートルのうち4キロメートルもブータンの領域に食い込んでいる、と述べた。また、その道路の建設は、1988年取り決めたガイドラインに沿っておらず、また1998年に平和と静穏を維持するために締結された、ブータン−中国国境問題の合意に反すると語った。
 政府を代表し国境管理防衛局長官タクショ−・ペマ・ワンチュクは本年初冬にティンプーで開かれた中国との会談の議題にも上ったと告げ、中国は「ブータンは過度に反応している。その道路の建設はチベットを含む西中国の経済発展のため」と返答したことを語った。また、その長官によると ブータン/中国両国で地図を広げ調べたところ、その問題のラインが著しく違っていたことも報告された。ブータン国営テレビによると、ブータン側も少しの修正には応じたが、中国側はそれでは受け入れられないとのこと。ワンチュクは近々北京で開かれる大臣級会議に委ねられたと述べた。
                            (WTNより  訳ケーサン・ドルカー チベット文化研究所)